しっかりなんてするもんか

ちくしょう!しっかりなんてするもんか!

えいがかんそうぶん WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜(半レビュー半日記、ネタバレほぼなし)

140514


WOOD JOB!(ウッジョブ)神去なあなあ日常 2014 予告編 - YouTube

TOHOシネマズにて。関係ないけど映画館に行く途中、自転車置き場(外)の隅に高校生6人位が座って「イナズマイレブンとかめっちゃ懐くね~」「小学生の時○○シュートとかすげーはやったよな~」みたいな話題で超盛り上がっていて、この子たちにとってはイナイレは俺世代にとってのビーダマンとかベイブレードとかなんだ・・・!と思ってなんか、なんか、なんか、なんかです(言葉に出来ない気持ち)。

それはともかくとして、矢口史靖監督の新作映画ウッジョブ!傑作であります!「ここがこうこうこうでこうだから良い」としっかりとは説明できるタイプの映画ではないけれどとにかくすべてが良い!コミュニティに入って仕事をして、認められて、一人前になること、生きていくことまでしっかりと描かれていて、見ていてなんだかずっと泣きそうだった。日本からこのフィルムが生まれたことが誇らしく思えるほど!

正直映画を見る前に特番も見てたし予告も何度も見たし、何となくおおまかなストーリーはわかっちゃってたし、いつも聞いたり見たりしている映画批評の人たちが「監督最高傑作!」とかも言っていて、ハードルをかなーーーり上げていくというコンディション的には最悪な(まぁ自分のせいなんだけど)中で見たのだけれどまぁ予想を超えてきましたこれ。だけどそれはストーリーにものすごいオチやどんでん返しがある!ような物でもなく、すごく複雑かつ巧妙な構成!的な超え方でもない。じゃあそれは一体何なのか?自分が思うに「映像」と「演技」ではないかと。

セリフでなく映像で何かを表す、ということをちゃんとやっているのは日本映画では珍しくて、見ていて「やはりこの男(監督)・・・信用できる!!」と勝手に思っていました。例えば村にやってきた主人公、朝早く枕を蹴られて起きる、それが何度も続く、しかし数回繰り返すと蹴られる前にパッと目が覚めて蹴ろうとした側が逆に驚く、という笑い。(とともに主人公が村の生活リズムに慣れてきたという要素含んでいるのがうまい!) 主人公の少年と村の女性が子どもたちのドッヂボールに乱入し投げ合う場面、セリフはないのに距離感が縮まることがとってもよく分かる。これぞ映像で見せるということなのではないかと!私は非常に感動いたしました。他にもこういったシーンは山ほどあるのですがネタバレ無しということで控えます(忘れたとか文字に起こしにくいとかではけっっっっしてないのですよ!)。そういった映像の強さ、みたいなのはスタッフと自分に相当な自信と信頼と実力がなければでてこないのであります。

そしてキャスティング、演技も素晴らしく、最初染谷君が矢口史靖作品参加と聴いた時かなり意外でえー合うのかなーと思ったけれど、そんな不安は最初の数シーンで吹き飛びましたわ。彼が真面目にやればやるほどに面白い。特に染谷くんと子どもたちとの会話の間とか、子供でも子供扱いしない感じとかすごくよかった。矢口監督は特番で「キャラクターがふざけるのではなくて真面目にやればやるほど観客が笑ってしまう事こそがコメディの本質なのではないか、なのでオーディションでもこっちを積極的に笑わせようとする人は取らない」と言っていてなるほど、と思うとともに自分の作っていく側としてのコメディ理論を再確認しました。しかし今回もメモが全く追い付かなくなるほどに次から次に笑いを仕込んでくるので大したものです。(上から目線)

全体的な構成も、ウォーターボーイズ以前の矢口作品にあったようなコント的・面白ければいいじゃん的な物からかなり進化していて、(特番のインタビューを見るとウォーター~以後から楽しませる職人に徹するのもいいな、と思い方向転換したそうです)映画としてテーマに沿った構成になり、しかしもちろん矢口史靖らしさ(映像的な笑い・実験的な要素を入れ込む)もあり、ちゃんとバランスをとっている!(簡単に言ってるけどこれがちゃんと狙ってできる監督は日本で数人しかいないと思うのです)

あと、都心の実家のシーンではデジタル、林業の村のシーンではフィルム、とカメラを替えているそうです。(検索で来た人のための申し訳程度の豆知識)

これは、やっぱり、俺が作りたい話はこういうものなのかもしれない、と改めて考えました。もともと矢口史靖監督というのは、自分の中でFlashアニメを作り始める前からずっと影響を受けたり研究したり目標であったりしていて、そこからいろんな映画を見ていくうちにこれもいいなぁあれもいいなぁとふらふらし始めたのですが、原点に帰るとやっぱりこれなのかもな、と思いました。もちろんこんなうまく出来る実力は全く無いけれど、凝った構図や複雑な脚本などテクニック的なことは二次的なもので、本質はこうでないと行けない、ここを目指すのが正しいのではないか・・みたいな。いやもうじぶんでも書いててよくわからないんですけどね。うーん、これはもう一回映画館まで見に行きたい!次は一人でなく誰かと一緒に見たいな。そいえば劇場で映画が終わった後あちこちで「おもしろかったね~」という声が聞こえていたのもなんだか久々というか新鮮だった。

この映画、まず第一に元気になれる映画であり、青春や成長物語でもあり、お仕事映画でもあり、自分の知らない場所へ連れて行ってくれる要素ももちろんある。劇場で終わったあと「うわあああああ」ってなった。良すぎて自分でもびっくりした。思わず中学生の時ぶりに久々に映画館でグッズ買ったりした。(劇中の団体名が入ったタオルとなんか匂いのするやつ 包んで枕元に置いて定期的にくんかくんかしてそのたびにこの感動を思い出すんじゃ~ところでこの匂いなんかに似てるな~って思ったら旅館の銭湯とかに置いてあるシャンプーのやつでした)映画館から出たら夕方で、予定もないし帰ればいいのに何となくドトールに入り、興奮が覚めるまで2時間ぼーっとしたり携帯で映画のサイトにあるプロダクションノート(見終わった後にオススメ)や監督のインタビューを見たりしていた。これは今年2月に「ウルフオブウォールストリート」という映画を見た時と同じドキドキ感であった。この、なにか凄いものを見てしまった!感と、自分だからこんなに好きになれたんだ!という少し誇らしい気持ち。ここまでくると例えば周りで見た人やいつも見ているブログのすべてが酷評していたとしてもなんかもうそんなの全然気にならなくなる。こういう気持ちになるのって映画を常に一定のペースで見ていてもなかなかなくて、ここ最近は「一年に一本でてくればいい方」くらいだったので半年もしないうちに二本目が出てくるとは思わなかった。なんですかねこれはなかなか説明しづらいんですけど、この気持ちは。あえて言うならこれが「ときめき」ってやつじゃないですか皆さん?えぇ??わかりますか?恋しちゃってる状態ですねこれは!フフフ。きっとこういう気持ちになるために、こういう作品と出会うために映画を見続けたり音楽を聞いたりしてるんだろうな。自分は。関係ないけどドトールで隣の席から「歴史に残るくらい怒られたんですけど~」って声が聞こえてきてなんだかその言い方が可笑しいなと思いました。グッバイ。(たまにはさわやかに)